死後事務委任契約は、葬儀や遺品整理、各種解約といった亡くなった後の手続きを、生前に信頼できる人へ任せる契約です。本記事では何が頼めて何が頼めないか、身元保証サービスと併用する利点をわかりやすく解説します。一人暮らしや家族に負担をかけたくない方は、続く本文で具体例と注意点を確認してください。
死後事務委任契約とは？依頼できること・できないこと
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要な手続きや整理を、生前に信頼できる人にお願いしておく契約です。家族が遠くにいる場合や頼れる親族がいない場合でも、葬儀や遺品整理などをスムーズに進めることができます。ここでは、契約でお願いできること、できないこと、そして契約時の注意点をわかりやすく紹介します。
依頼可能な業務
死後事務委任契約でお願いできることは、遺体の引き取りです。
家族が遠方にいたり、親族がいない場合でも、受任者が遺体を引き取り、葬儀の準備を進めることができます。次に、葬儀や納骨、永代供養の手続きもお願いできます。火葬や埋骨の方法、供養の方法など、自分の希望を反映させられるのが特徴です。
さらに、家賃や医療費、介護費などの精算や行政手続き（年金や健康保険の手続きなど）、部屋の清掃や遺品整理、Webサービスやデジタルデータの処分も依頼可能です。また、ペットを飼っている場合には、ペットの引き継ぎ先の指定も契約に含められます。これらを契約しておくことで、亡くなった後の手続きをスムーズに行え、周囲に負担をかけずに済みます。
依頼できないこと
一方で、死後事務委任契約でお願いできないこともあります。代表的なのは生前の医療行為への同意や介護、生活のサポートです。契約で依頼できるのはあくまで死亡後の事務だけで、生前の判断や生活支援は含まれません。また、財産の相続や不動産の売却、銀行口座の引き出しなどの処理も依頼できません。これらは法律上、相続人が行う必要があり、死後事務委任契約では代理できないからです。財産に関する希望は「遺言書」で残す必要があります。
契約締結時の意思能力や契約内容の注意点
契約を結ぶときには、意思能力がある状態であることが必要です。
認知症などで判断能力が低下した場合、契約は無効になるため、早めの検討が重要です。また、契約書に記載する内容や費用も確認が必要です。契約で指定した費用以上は受任者が支払えないため、必要な手続きや金額をあらかじめしっかり見積もっておくことが大切です。さらに、契約をスムーズに履行するため、親族への事前通知も忘れずに行いましょう。
身元保証サービスとの違いと併用のメリット
高齢者や一人暮らしの方にとって、自分の生活や死後の手続きをどうするかは大きな不安です。身元保証サービスと死後事務委任契約は、どちらもこうした不安を減らす手段ですが、役割や対象が少し違います。ここでは、両者の違いと併用のメリットについてわかりやすく解説します。
身元保証サービスがカバーする入院費・施設利用料の保証や日常支援
身元保証サービスは、病院や介護施設に入院・入所する際の保証人としての役割を持ちます。入院費や施設利用料の支払いを保証するほか、契約手続きや緊急時の連絡も代行してくれます。また、日常生活の支援も含まれることが多く、買い物の代行や通院の付き添い、定期的な安否確認など、生きている間の生活面で安心を得られるサービスです。
死後事務委任契約では基本的に「死後」の事務に特化している理由
一方、死後事務委任契約は文字どおり「死後」の事務に特化しています。
葬儀や納骨、遺品整理、各種契約の解約など、本人が亡くなった後に必要な手続きを依頼するための契約です。生前の生活支援や財産管理は含まれず、あくまで死後に発生する事務に集中しているため、費用を抑えながら確実に手続きを進めることができます。
必要に応じて両サービスを組み合わせることで安心度が高まる
両方のサービスは目的が重なる部分もありますが、カバーする範囲が違うため、必要に応じて組み合わせると安心度が高まります。生前は身元保証サービスで日常生活や入院時のサポートを受け、死後は死後事務委任契約で葬儀や遺品整理を依頼することで、生活面も死後の手続きも万全に準備できます。とくに一人暮らしや親族が遠方にいる場合、両方を活用することで、本人だけでなく周囲の負担も大きく減らすことができます。
どんな人が死後事務委任契約を検討すべきか
葬儀の準備や遺品整理、行政手続きなど、死後に行う事務は意外と多く、親族や身近な人に負担がかかることもあります。ここでは、どんな人がこの契約を検討するとよいかを具体的に紹介します。
家族や親族に負担をかけたくない人
家族や親族が遠くに住んでいる場合やすでに高齢である場合、死後の手続きをお願いするのは大きな負担になります。
死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀や役所手続き、家財の整理などを、信頼できる第三者にお願いできます。自分の希望どおりに手続きが進み、家族の負担を減らせるのが大きなメリットです。
おひとりさまや内縁関係のパートナーがいる人
一人暮らしの方や法律上の結婚をしていないパートナーがいる場合も、死後事務委任契約は有効です。おひとりさまは親族が遠方にいることも多く、遺体の引き取りや葬儀の準備を頼む相手がいないケースもあります。内縁のパートナーの場合は法的な相続権がないため、契約を結んでおくことで希望どおりの手続きを任せられます。
遺言執行や任意後見制度との併用でトラブル回避
死後事務委任契約だけでは、財産の相続や銀行口座の払い戻しなどは依頼できません。そのため、遺言書や遺言執行者と組み合わせると、財産に関するトラブルを防ぐことができます。
また、生前の生活や財産管理に不安がある場合は、任意後見制度と併用することで契約の範囲を明確にし、安心して死後の準備を進められます。
まとめ
死後事務委任契約は、亡くなった後の葬儀や遺品整理、行政手続きを信頼できる人に任せられる契約です。家族や親族に負担をかけず、自分の希望どおりに手続きが進められるのが大きなメリットです。一方で、生前の医療や生活支援、財産の相続などは依頼できないため、遺言書や任意後見制度と組み合わせるとより安心です。また、身元保証サービスと併用すれば、生前の入院や生活面のサポートもカバーできます。一人暮らしや親族が遠方にいる場合、内縁のパートナーがいる場合など、必要に応じて両方を利用することで、本人も家族も安心です。早めに準備して、希望どおりの手続きを整えておくことが大切です。
