身寄りのない高齢者が介護施設へ入所する際、身元保証人がいないことが大きな壁になるケースがあります。保証人がいないと契約手続きがまったく進まないことも。この記事では、身寄りのない方が施設に入所するために必要な手続きや、身元保証の確保方法をわかりやすく解説します。
目次
身寄りがなくても施設に入所することは可能なのか
結論からいうと、身寄りがない場合でも施設への入所自体は可能です。しかし、ひとり暮らしをしていると「自分で生活できなくなったらどうしよう」「身寄りがないけれど老後は施設に入れるのだろうか」といった不安を抱える方も少なくありません。実際ほとんどの施設では、入所希望者に「身元保証人」の存在を求めています。総務省の調査によれば、病院や介護施設の9割以上が身元保証人がいることを条件としていることがわかっており、身元保証人がいない場合の施設側の対応は二極化している(「個別に対応する」と答えた施設が5割、「入所をお断りする」と回答した施設が2割)のが現状です。
つまり、身元保証人がいない方は入所を断られる可能性が高いのです。身元保証人が必要とされる理由や、入所時に求められる具体的な役割については、次章でくわしく見ていきましょう。
病院や介護施設が求める身元保証人とは
「身元保証人」とは、入所者の身元を保証し、入所や入院にともなうさまざまな責任を担う人のことです。施設や病院が身元保証人に求める役割として、以下の5つが挙げられます。1. 緊急時の連絡先
施設で生活していると、体調不良やケガといった予期せぬ事態が起こる可能性があります。たとえば、入所者が突然体調を崩した場合、医師の診察が必要になることもありますが、施設の職員は通常、入所者を病院へ付き添わせることはできません。そのため、緊急時に連絡が取れる家族や身元保証人の存在が不可欠です。自治体が緊急連絡先を請け負う場合もありますが、土日や夜間は対応できないため、施設としてはリスクが残ります。2. 必要な物品の準備
施設ではすべての生活必需品が用意されているわけではありません。衣類、日用品、衛生用品など、入所者が生活するために必要な物品は、身元保証人が準備・管理するのが一般的です。身寄りのない方の場合、自身で調達することが困難な場合もあるため、身元保証人のサポートが重要となります。3. 施設利用料の連帯保証人
身元保証人は、施設利用料の支払いに関しても連帯保証の役割を担います。認知症の発症や死亡により入所者が支払い不能となった場合、施設は未収金のリスクを負うことになります。成年後見制度によって口座凍結の解除が可能ですが、手続きには時間を要するため、施設にとって身元保証人は重要な存在です。4. 亡くなったときの退所手続きや遺品の回収
身寄りのない方が亡くなった場合、遺品の引き取りや退所手続きは施設職員では対応できません。遺体の火葬・埋葬は自治体が行いますが、退所手続きや未精算の支払い、私物の整理などは身元保証人に求められます。5. 病気やケガによる入院時の手続き
入院時には、施設職員ではなく身元保証人が入院手続きや必要書類の提出を行います。身寄りがない場合、この役割を果たせる人がいないと、入院手続きがスムーズに進まない可能性があります。身寄りがない高齢者が施設に入所する方法
身寄りがなく、家族による身元保証ができない場合でも、以下の方法を活用することで施設入所が可能です。身元保証サービスを利用する
身元保証サービスとは、民間の事業者が家族の代わりに身元保証人の役割を担う仕組みです。入所時の契約や支払い、緊急時の連絡などを代行してくれるため、身寄りのない方でも施設入所のハードルを下げることができます。ただし、事業者によって費用やサービス内容は異なり、契約後のトラブルも報告されているので、契約前に信頼できる事業者を見極めることが重要です。成年後見制度を利用する
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人の財産管理や生活支援を法的に行う制度です。施設によっては、成年後見人によって身元保証の役割が保証される場合、入所が可能です。ただし、申立てから後見開始までに時間がかかるため、希望の施設への入所時期に間に合わないケースもあります。また、後見人への報酬も発生するため、制度の内容を十分に理解し、早めの申請が推奨されます。身元保証人不要の施設を選択する
全国には身元保証人不要で入所できる施設も存在します。しかし総務省の調査によると、身寄りがないまま入所できる施設は、全体のわずか1.7%にとどまり、空きが少ないことも多いのが現状です。入所希望時に施設が見つからない可能性もあるため、地域包括支援センターなどに相談することが望ましいでしょう。身寄りがないことで起こる施設入所以外の問題点
病院の入院手続きや施設に入所時には、身元保証人の手を借りなければならず、身寄りのない方にとって不便に思うシーンが出てくるでしょう。しかし、身寄りがないことで施設入所時以外にもさまざまな問題が生じるのです。体調の変化を確認してくれる人がいない
自宅で倒れた場合、発見が遅れると障害が残るリスクや孤独死の可能性があります。近所の方との交流や見守りサービスを活用し、万が一に備えることが重要です。生活事務を代行してくれる人がいない
病院や役所での手続き、介護施設入退所の契約、医療費還付申請など、年を重ねるとひとりで行うのが難しい事務手続きがあります。生活事務サポートサービスを利用すると、代理で手続きを行ったり、買い物や通院の同行をしてもらえたりします。入院時や施設入所後の財産管理ができない
入院や入所後に必要なお金を自分で用意できない場合があります。NPO法人や専門業者が財産管理を代行してくれるサービスを利用することで対応可能です。ただし認知症発症後は本人の意思能力の喪失により、財産管理サポートが制限されることがあります。認知症発症時の身上監護と財産管理
認知症になると財産管理や契約行為が制限されます。任意後見契約を事前に結んでおくことで、必要なタイミングで後見が開始され、信頼できる専門家が財産管理や生活支援を行えます。延命措置の意思確認ができない
末期医療で延命治療の意思確認が必要な場合、家族がいないと医師が本人の希望を確認できません。事前に「尊厳死宣言書」を作成することで、医療に関する希望を伝えることが可能です。死後の各種手続き
死亡後の手続き(死後事務)は本来親族が行うのが前提です。そのため、施設職員や自治体でも手続きの代行ができません。死後事務委任契約を結ぶことで、専門家に手続きを委任し、滞りなく処理してもらえます。財産承継先がない
法定相続人がいない場合、残余財産は国庫に帰属します。生前に遺言を作成することで、希望する第三者や団体に承継・寄付することが可能です。公正証書遺言を活用すると、より確実に承継が行えます。身寄りがなく身元保証人を用意できない場合の相談先は?
身寄りがなく、身元保証人を用意できない場合、司法書士や弁護士、地域包括支援センター(自治体)、消費生活センターに相談するとよいでしょう。それぞれ、入所や契約に関する具体的な相談が可能です。また、生活保護を受けている場合でも施設に入所することは可能です。介護付き老人ホームでは11.3%、住宅型ホームでは49.0%、サービス付き高齢者向け住宅では32.1%が生活保護受給者の入所実績があります。この場合は、担当ケアマネージャーやケースワーカーに相談するとよいでしょう。