高齢者の入院や介護施設への入居時に求められる身元保証。必要に迫られるシーンが多く、近年は家族に代わり身元保証会社を利用するケースが増えていますが、契約内容の誤解やトラブルも少なくありません。この記事では、身元保証サービスを安全に利用するための注意点と、実際の事例をもとにした対処法をご紹介します。
身元保証サービスの役割とは
高齢化が進む現代社会では、介護施設への入居や病院への入院の際に「身元保証人」が必要とされるケースが増えています。身元保証人とは、施設側に対して費用の支払いを保証したり、退所・退院時の身柄の引取りを行ったりする人のことを指します。通常は家族や親族がその役割を担いますが、すべての人が頼れる親族をもっているわけではありません。実際、独身や未亡人で身寄りのない高齢者や、家族と疎遠になっている方も少なくないのです。身元保証サービスは、そのような状況で頼りになります。身元保証会社は、身元保証人の代行を有料で行う事業者で、親族に頼めない方が安心して施設を利用できるよう支援しています。
もちろん身元保証会社が提供するサービスは、単なる保証にとどまりません。日常生活の支援や、亡くなった後の手続きを行う「死後事務委任契約」など、利用者の生活全般をカバーする包括的なサポートを提供している会社も多くあります。
こうしたサービスは、今後ますます重要性を増すと考えられていて、総務省の「高齢者の身元保証に関する調査」では、調査対象となった病院・施設の90%以上が身元保証人を求めていることが明らかになっています。また、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、独居高齢者の割合は今後も増加する見込みです。そのため、身元保証会社の需要は今後さらに拡大していくと考えられます。
身元保証サービスに関するトラブルは多い?
身元保証サービスの需要が増加する一方で、サービス利用に関するトラブルも報告されています。総務省の調査によれば、2018年から2021年の間に消費生活センターへ寄せられた身元保証会社関連の相談件数は、毎年100件以上で推移しているとのことです。主な相談内容は「契約内容が分かりにくい」「サービス料金が不明瞭」「事業者の対応が不適切」などです。とくに、契約前の説明不足や、利用者の理解が不十分なまま契約してしまうケースが多く見られます。高齢者本人が複雑な契約内容を十分に理解できず、あとになってトラブルに発展する事例も少なくありません。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、契約の仕組みを理解し、信頼できる事業者を選ぶことが不可欠です。
【事例あり】身元保証サービス関連のトラブル
身元保証サービス関連のトラブルとしてどのような事例があるのでしょうか。ここでは、実際に報告されている事例をご紹介します。事例1:契約内容を十分に理解せず契約してしまった
独り暮らしの80代男性が、将来の入院に備えて身元保証会社と契約したところ、契約内容が不明瞭なまま契約が進み、不信感を抱いたという事例です。初期費用約40万円、月会費3,000円という契約でしたが、具体的なサービス内容が明示されていませんでした。身元保証サービスは事業者ごとに内容が異なり、費用の内訳も「身元保証料」「生活支援料」「死後事務手続料」など、名称や範囲が統一されていません。そのため、契約書の内容を確認しないまま署名してしまうと、後から思わぬトラブルに発展しやすいのです。
事例2:追加サービスで予想外の高額請求に
他県の介護施設に入所する義母のために身元保証サービスを申し込んだ50代女性は、追加サービスの契約を重ねた結果、想定を大きく上回る費用を請求されたというトラブルに見舞われたという事例です。当初は「1時間数千円の付き添いサポート」と説明されていましたが、後になって「身元保証サービスを追加しなければ24時間サポートは提供できない」と告げられ、結果的に費用が高額化してしまいました。独立行政法人・国民生活センターの調査では、身元保証サービス契約の平均金額は約147万円ですが、身元保証料だけではなく、日常生活支援や死後事務委任契約などを追加することで、上記の例のように費用が膨らむ傾向があります。
事例3:契約していないサービスが含まれていた
老人ホーム入居時に身元保証を求められた80代女性は、事業者から長時間の説明を受けたものの内容を十分に理解できず、契約していないはずのサービスまで含まれた契約を結んでしまいました。支払額は100万円に達し、後で契約書を確認したところ、生活支援サービスなどの不要な項目が追加されていたことが発覚しました。このように身元保証サービスの内容は多岐にわたり、専門用語も多いため、高齢者がひとりで理解するのは難しいケースがあります。身元保証サービスのトラブルを防ぐ対処法
身元保証会社とのトラブルを防ぐためには、契約前にいくつかのポイントを確認しておくことが重要です。ここでは、信頼できる身元保証会社を見極めるためのチェックポイントと、トラブル発生時の相談先を紹介します。契約までの説明がていねいかどうか
契約内容を十分に理解できるまでていねいに説明してくれる事業者は信頼に値するでしょう。反対に、一度きりの説明で契約を急がせる会社は要注意です。利用者が納得するまで質問を受け付け、施設職員やケアマネジャー、弁護士などの第三者立会いを提案してくれる会社であれば、より安心です。また、契約時には「重要事項説明書」にもとづいた説明が行われるかどうかも大切な判断材料です。これは、賃貸契約や老人ホーム入居契約でも用いられる重要な書類で、契約内容の透明性を確保する役割があります。
費用の内訳を明確に提示しているか
一般的な費用項目には、基本契約料、公正証書費用のほか、身元保証料、預託金などがあります。それぞれの費用がどのサービスに対応しているか説明を受け、不明点を残さないことが重要です。信頼できる会社は、費用項目とサービス内容を明確に提示してくれるでしょう。また、トラブルの元になりやすい「追加費用」を発生させないためにも、必要なサービスを明確にし、不要な項目は断る意思をもつことも大切です。預託金の管理体制が適切か
身元保証会社の多くは、将来的な費用に備えて「預託金」を預かります。しかし、過去にはこの預託金を事業運営資金に流用して問題になったこともあります。安全な会社を選ぶには、以下の4つを確認しましょう。・預託金を運転資金口座と分けて管理しているか
・信託銀行など外部機関に預けているか
・利用者ごとの入出金記録を保管しているか
・管理状況を定期的に報告しているか
これらが契約書に明記されていれば、より安心できます。
契約書に必要な規定が含まれているか
とくに注意すべきは、財産管理や解約時の返金に関する条項です。高齢になると判断能力が低下し、財産管理が難しくなることがあります。信頼できる会社は、財産管理委任契約や任意後見契約を併せて締結できる仕組みを備えています。契約時には、家族や友人など信頼できる第三者に同席してもらう方法もおすすめです。また、解約時の返金ルールが不明瞭な契約は避けましょう。支払済み費用のうち返金対象となる項目が明記されているか、預託金の返戻に関する条項があるかを必ず確認してください。